-もし待ってくれているファンがいるなら、僕らはどこにでも行きますよ- ドレスコーズ・志磨遼平インタビュー@上海
先日、自身初の海外単独公演となるthe dresscodes TOUR2025 extra live (the first Overseas Oneman Concert)@上海・万代南梦宫を大成功のうちに終えたドレスコーズ・志磨遼平。
そんな志磨遼平が上海公演の当日、開演直前に受けたインタビューの日本語版を公開!
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——最新アルバム『†』は、the dresscodes にとって 10 枚目のアルバムですが、志磨さんご本人が約 10 年ぶりにジャケットに登場されています。今回のジャケットには、どのようなコンセプトや意図があったのでしょうか?
志磨遼平:今回のジャケットのイメージは、アルバムの曲を作っている時にふと頭に浮かんだものです。それはスーツを着て、髪の毛を逆立てた僕が写っているイメージでした。
でも、中指の包帯は偶然です。本当に撮影前に怪我をしたんです。そこにコンセプトや意図はありません。
——『†』のテーマは「ロックンロール」だと伺いました。いまの志磨さんにとって、ロックンロールの持つ「力」や「可能性」とは何でしょうか?
志磨:ロックンロールはそもそも混血の音楽です。アメリカ生まれのカントリーミュージック、アフリカ生まれのブルース、さらに中南米生まれのラテンミュージックも混ざっています。
今は日本でも、世界でも、様々な原因で分断と対立が生まれていますね。僕にとってのロックンロールは、その分断や対立に自分が加担しないことの意思表明です。世界がどんなに悪くなっても、僕らは諦めてはいけません。きっと良くなるはずだという「可能性」を信じる「力」がロックンロールにはあると思っています。
——アルバムの制作について、「音楽を始めたときみたい」とおっしゃっていました。デビュー当時にロックをやろうと思った衝動と、今作を書き上げた動機の間で、気持ちの変化や変わらない部分があれば教えてください。
志磨:デビュー当時の僕の望みは、ただロックスターになることでした。平凡で退屈な人生に抵抗するためにロックバンドをやろうと思ったのです。
しかし、今作の『†』を作った動機は、さっきもお話ししたような、社会の分断や対立に抵抗を示すためです。それは自分一人の人生を変えるよりもさらに難しい挑戦です。これが一番大きな変化でしょうね。
でも、新しい曲のアイディアが閃く瞬間や、それを初めて演奏する瞬間の喜び、興奮は、今も昔も全く変わりません。これに勝る喜びはないんです。
——『GANTZ:O』『溺れるナイフ』『零落』など、映画の主題歌も多数手がけられています。作品の世界観や監督の意向と、自分自身の表現。そのバランスはどう取っていますか?制作時のエピソードなどもあればぜひお願いします。
志磨:映画の主題歌を作るときは、まずその作品のテーマを最優先します。僕の表現欲求はその次ですね。
作品のテーマを理解するために原作を深く読み込んで、監督とも何度も話し合います。原作や台本の印象的なセリフをメモしながら、それをもとに曲を作っていきます。
——映像作品だけでなく、舞台作品の音楽も担当され、実際にライブ演奏もされています。普段のライブと比べて、こうした表現にはどんな違いや新しい感覚がありますか?
志磨:普段のライブは、当然、音楽が主役です。音楽のために照明や演出があって、音楽を目的にお客さんが集まります。しかし、舞台作品はそうではありません。
そこでは音楽はギアの一つです。物語のための部品にすぎません。
例えば普段は“1、2、3、4…”とドラマーがカウントして演奏を始めますが、舞台ではそれは禁物です。セリフの邪魔になるからです。役者さんの動作や呼吸に合わせてテンポを決めて、ノーカウントで演奏を始めなければいけません。このような違いが、他にもたくさんありますよ。
——2022 年からスタートした「対バン企画」では、betcover!!や柴田聡子さんなど、様々なアーティストと共演されています。共演相手はどのように選ばれているのでしょうか?
志磨:僕はミュージシャンである前に、一人の音楽ファンです。新しい音楽との出会いを常に求めています。僕が共演相手に選ぶのは、そうやってレコードショップで見つけた素晴らしいアーティストの方々です。
選ぶ基準に人気や評価は無関係です。ただ僕が素晴らしいと思うアーティストに声をかけています。
——特に刺激を受けた対バンがあれば教えてください。
志磨:もちろん、どの対バンからも刺激を受けましたが、忘れられないのはPIZZICATO FIVE という日本のグループのリーダーで作曲家の小西康陽さん。小西さんと僕は親子ぐらい年齢が離れていて、僕は10代の頃から小西さんの音楽のファンでした。
対バンの当日、小西さんを知らない若いファンに向かって、小西さんはこう挨拶しました。「どうも、志磨遼平の父です。いや、嘘ですよ。本当は、志磨遼平の祖父です」。小西さんは厳格な作曲家でありながら、こういったユーモアで観客をリラックスさせることもできる、素晴らしい方なんです。
——神聖かまってちゃんのの子さんが「志磨くんとは『対バンしようね』って267 回くらい言ってきたよ」と語っていましたが、逆に、志磨さんが何度もお誘いしてようやく叶った、またはまだ叶っていない“夢の対バン相手”はいますか?
志磨:たくさんいますよ。小西さんのように、僕が10代の頃に影響を受けた方々はみんなそうです。あるいは、デヴィッド・ボウイのように既にこの世を去ったアーティストも“叶わない夢の対バン相手”です。
でも、神聖かまってちゃんとの対バンも同じくらい嬉しかったですよ。なぜなら僕らは同じ頃にデビューしましたが、その頃のバンドの多くは現在、存在しないからです。バンドを長く続けることはそれくらい難しいことです。もし夢が叶うなら、10年前、20年前に共演したバンドたちと再び共演したい。今も活動を続けている素晴らしいバンドが、日本にはたくさんいるんです。
——最近のライブでは、登場 SE としてボビー・ヴィントンの「Mr. Lonely」が使われていたり、自叙伝のタイトルが『ぼくだけはブルー』だったりと、“孤独”に対するこだわりを感じます。志磨さんにとって「孤独」とはどんな存在なのでしょうか?
志磨:面白い質問です。例えば誰かといても孤独を感じる瞬間はありますね。その相手と分かり合えないとき、コミュニケーションがうまくいかないとき。例えば学校で、あんなにたくさんの人に囲まれていても僕は孤独だったし、恋人といても孤独だった。
でも今、僕は初めて上海に来たにもかかわらず、全く孤独じゃありません。こうしてインタビューを受けて、分かり合うことができる。こんなふうに誰とでも分かり合うことができれば、僕はきっと作品を作らないでしょう。孤独でなければ、音楽もアートも必要ありません。
でも、いつもこんなふうにうまくいくとは限らない。また必ず孤独な瞬間はやってきます。そんなときに僕は作品を作ります。人はみんな必ず孤独だから、音楽やアートは永遠になくならないんです。
——中国のバンドに対するコメント動画(https://m.weibo.cn/detail/5186518400372217)では、とても丁寧にレビューされていたのが印象的でした。
志磨:みんなかっこよかった!
——事前に歌詞はチェックされていたのでしょうか?
志磨:いいえ。
——普段外国語の音楽を聴く際、歌詞はどれくらい意識されますか?
志磨:あまり意識せずに聴いています。僕に分かるのは日本語だけだから。そのかわりに、演奏のフィーリングとか、その人のアクションとか、その人のスタイルとか、そういったものの中にメッセージを探します。歌詞がわからなくても、メロディやフィーリングで、「あ、きっとこの人も僕と同じで孤独なんだ、寂しいんだ」とか、「この人は僕と同じものが好きなんだ」ということは十分伝わります。
——志磨さんの歌詞とかはとても文学的だと思ったので。歌詞は分からなくても全然大丈夫ですね。
志磨:はい、その通りです。言葉には限界があるけど、音楽には限界がないはずですから。
だから今晩のライブも楽しみです。もし僕の音楽が上海の皆さんにうまく伝わるなら、言葉よりも音楽にはたくさんの可能性があることが証明できますね。
——初の海外単独公演が上海で実現しましたが、このライブはどういった経緯で決まったのでしょうか?
志磨:実現したのはtextur3のおかげです。今日のために惜しみない情熱を注いでくれました。海外公演の計画は2018年頃からあったのですが、その後のコロナ禍もあり、実現まで7年もかかってしまいましたが、今それがようやく実現しました。
——今後も他の国や都市でライブを行うご予定はありますか?
志磨:まだ予定はないんですけど、ぜひやりたいですね。今もまだ、僕らのファンが上海にいることが信じられないんです。今晩ステージに上がったら、客席には誰もいないかもしれない。今もまだそう思っています。でも、もし待ってくれているファンがいるなら、僕らはどこにでも行きますよ。
—— 毛皮のマリーズには「上海姑娘」という楽曲がありますが、初めての海外公演となる上海で、この曲を披露する予定はありますか?
志磨:はい。今晩、歌う予定です。
—— 本当ですか?!とても嬉しいです!そういえば、この曲を作るきっかけは何でしたか?
志磨:それも一番最初の質問と同じで、理由もなくイメージが浮かんだんです。なぜか、上海の夜のイメージが。僕が上海に来るのは今回が初めてなので、自分でも不思議ですけど。でも、上海の街を題材にした作品は、映画にも音楽にもたくさんありますからね。
それはいつもすごくロマンチックなイメージです。それで、僕も上海をイメージして曲を書いてみたんです。もう15年も前のことです。そのときはまさか上海で歌うなんて想像もできませんでした。
——最後ですが、上海で何か美味しいものは食べられましたか?
志磨:昨日食べました。上海料理を。
——一番好きな料理とかありますか?
志磨:どれも美味しかったですけど、デザートに食べたスープに胡麻団子が入ったものが、すごく美味しかった。
2025 年7 月13 日@周刊邦乐rock
インタビュー原文(中国語)はこちら:https://weibo.com/ttarticle/p/show?id=2309405189517413056965
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【セットリスト】
the dresscodes TOUR2025 extra live (the first Overseas Oneman Concert)
01. ヴィシャス
02. うつくしさ
03. リンチ
04. 人間不信
05. この悪魔め
06. 聖者
07. がっかりすぎるわ
08. 悲しい男
09. ロックンロール・ベイビーナウ
10. REBEL SONG
11. コミック・ジェネレイション
12. ビューティフル
13. シスターマン
14. ミスフィッツ
<アンコール>
15.上海姑娘
16.人間ビデオ
17. 愛に気をつけてね
🎧セトリプレイリストはこちら
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