MV解説

23.06.23

『最低なともだち』Music Videoをめぐって──あらかじめ失われたカウントダウンの先に(映画監督 山戸結希)

おふたりへ
雨宮を演じた白鳥晴都さんにとって、今作が光となりますように。
春野を演じた原田琥之佑さんにとって、今作が影となりますように。
願って願ってやみません。
この現実を生きゆく心と身体を、
どれだけ大切にしたかったのか、
この先も、大切に考えているか、
あたたかい言葉では超えられないものが、
きびしい現実をも凌駕してゆく刹那の矛先が、
ただ、あなたの揺るぎなさが、
どうか、このたった五分間に映っていましたら倖せです。
これから日々、取り戻せないかたちで輝きを増すあなたにとって、
いつの日も、体温を思い出せるような、春の景色がありますように。

志磨遼平さんへ
これからも、人間ドッグにもゆかれて、長く命を留めてくださいね。
病めるときも、健やかなるときも、どうぞ、呼吸なさってください。
その生を、全霊で記録いたします。
そうして一瞬の季節が過ぎ去って──
業火に焼かれる寸前までも、それはそれは、死ぬほど、うつくしいのでしょうね。
そんな完成形までをも、ヴィデオに収められたならば……

誰よりも暗く輝いていてほしい、
最期のひと時まで。
そのひと息までをも、歌として。
この掌にあなたの死に顔を抱くのだと。
複製されるべき一刻を待ちながら、きょうも、カメラの後ろ側にいます。



神様、お願いいたします。
『最低なともだち』が、永く愛されますように。
花散らす雨に濡れた物語、そのエンドマークの向こうに。
あらかじめ失われたカウントダウンの先に!
YouTubeという機構によって、何度でも蘇り、この世に漂って、
たとえば、百年後にだって、届いてしまいますように。
そのとき私たちは、もう誰もこの世にはいないけれど。



山戸結希(映画監督)